赤字の飲食店店舗は売却できる?売却のタイミングを逃した際のリスクとは

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飲食店の業績は、流行や周辺店舗の状況、さらには消費者の生活様式の変化、急激な物価高や人件費高騰など外部要因の影響を強く受けます。そのため、企業努力だけでは改善が難しい局面もあるでしょう。
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これらが原因で、半年以上、月の売上が固定費を下回り続けるような状況になると、閉店を現実的に考えるケースが増えるようです。店舗売却は負債をできる限り抱えずに閉店するための有効な手段ですが、赤字の店舗を売却することは可能なのでしょうか。詳しく解説します。
赤字の飲食店でも売却は可能?「居抜き」に価値がある理由
結論から申し上げますと、赤字になってからでも店舗の売却は「可能」です。
飲食店の売却方法には、主に会社の株式ごと譲渡する「M&A(株式譲渡・事業譲渡)」と、内装や設備を引き継ぐ「居抜き売却」があります。多くの個人事業主の飲食店において現実的な選択肢となるのは、後者の「居抜き売却」です。
なぜ赤字でも売れるのか?
居抜き物件の購入を希望する経営者は、「飲食店を新たに始めたいが、初期費用をなるべく抑えたい」と考えています。彼らにとって価値があるのは、店舗の「立地」や、厨房機器・内装などの「設備(造作)」です。これらを「造作譲渡(ぞうさくじょうと)」として買い取るため、店舗の現在の売上や利益といった業績の良し悪しは、直接的には関係がないのです。
実際に、居抜き売却の成否において、売り手と買い手の経営状況は相関しないと考えられています。閑散としていたラーメン店が閉店した後、すぐに新たなラーメン店がオープンし、繁盛店になることも珍しくありません。

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赤字店舗の売却はタイミングが命!遅れると生じる3つのリスク
赤字店舗を売却する際、最も注意したいのは「タイミングを逃すこと」です。 店舗の売却活動には、買い手探しから契約、引き渡しまで、一般的に3ヶ月〜半年程度の期間を要します。「資金が底をついてから」では遅すぎるのです。
売却のタイミングを逃してしまった場合、次のようなリスクが考えられます。
1. 売却益より負債が大きくなる
店舗を売却(造作譲渡)する最大のメリットは、売却益が得られることです。これを資金源にし、再出発の準備金にしたり、借入金の返済に充てたりすることができます。負債の返済負担から解放されれば、精神的な負担も大きく軽減されるはずです。
しかし、売上を改善するために借入を繰り返すなどして負債が膨らんでしまえば、売却益で清算することは難しくなります。少しでも「撤退」の二文字が頭をよぎったら、借入が増える前の段階で専門家や店舗売却業者に相談してみましょう。
2. 交渉時間が足りず、倒産に追い込まれる可能性がある
資金が完全に枯渇するまで営業を続けると、最終的に「倒産(自己破産)」が選択肢になってしまうかもしれません。
注意が必要なのは、破産手続きを申し立てたとしても、賃貸借契約に関わる問題がすべてきれいに解決するとは限らない点です。原状回復義務の問題や、未払いの家賃が連帯保証人に請求されるなど、周囲に多大な迷惑をかけるリスクも残ります。 問題が拡大する前に、自分の意志で売却を決め、計画的に整理していくことが大切です。
3. 大家さんへの承諾や業者選定に失敗する
店舗売却(居抜き)を進める上で最大のハードルとなるのが、「貸主(大家さん)の承諾」です。 賃貸借契約において、無断で店舗の権利を第三者に譲ることは基本的に禁止されています。そのため、造作譲渡を行うには貸主の許可が必要不可欠ですが、この交渉には専門的な知識と経験が必要です。
また、店舗売却は市場の動きを読み、適正な価格で行うことで成功率が高まります。そのためには、実績が豊富な信頼できる業者をパートナーに選ぶ必要があります。 資金繰りに余裕がないギリギリの状態では、じっくりと業者を見極める時間も、貸主と丁寧に交渉する時間も確保できません。結果として、足元を見られた安い価格で手放さざるを得なくなったり、売却そのものが認められなかったりする恐れがあります。
早めの査定が再出発への第一歩
閉店はマイナスな決断だと思われがちです。しかし、戦略的に撤退することで閉店コストを抑えたり(原状回復費用の削減など)、生活へのダメージを最小限にしたりすることができます。
赤字経営が続いているからといって諦める必要はありません。まずは、自分の店舗にどれくらいの市場価値があるのか、無料査定を依頼することから始めてみてはいかがでしょうか。現状を正しく把握することが、納得のいく再出発への第一歩となります。