飲食店を居抜きで売却するには? 売るまでのステップと注意点を解説

画像素材:PIXTA
飲食店を「居抜き」で売却できれば、その費用がゼロになるだけでなく、内装や設備を資産として現金化できる可能性があります。しかし、正しい手順と期間で動かなければ、利益どころか大きな損失を生むことも。本記事では、実際の売却事例や税金・手数料の仕組みを交え、あなたの大切な店を「賢く売却」するための全手順を解説します。
目次
この記事は、こんな人におすすめです
・閉店コストをゼロにし、少しでも多くの手残り金額を確保したい方
・「いつから動き出せばいい?」という売却スケジュールの目安を知りたい方
・消費税や譲渡所得など、売却に関わる税金・手数料について知りたい方
・大家さんへの交渉で失敗し、居抜き不可になるリスクを回避したい方
居抜きで売ることのメリットとは?
居抜きの状態で売却するということは、建物自体を売買するわけではないので、店舗を借りている場合でも店舗の貸主(オーナーなど)の許可があれば可能です。うまく売却できれば金銭的なメリットがあります。また、原状回復の費用も節約できます。
売り先はどのように探すのか
居抜きで飲食店の造作を売りたい場合、2つの方法が考えられます。まずは、自分の知り合いや紹介などで売却先があらかじめ決まっている場合。こちらは貸主の許可を受けていれば、直接、個人対個人で売買することができます。
もう1つ、売却先のあてがない場合は、速やかに売却先を探したり、売却交渉をすることは難しいため、居抜きの専門業者に仲介してもらって売買するのがベターです。
居抜き売却にかかる期間は平均何ヶ月?
飲食店を少しでも有利な条件で手放すために、最も重要なのがスケジュールの管理です。居抜き売却にかかる期間は平均して3ヶ月から6ヶ月程度、どんなに早くても1ヶ月から2ヶ月は必要だと考えてください。
これは、ただ買い手が見つかれば良いというわけではなく、大家さんへの承諾や契約手続きに一定の時間が必要になるからです。
ここで重要になるのが、現在契約している物件の「解約予告期間」です。多くの賃貸借契約では、解約の3ヶ月前や6ヶ月前に予告をしなければならないと定められています。
たとえば、解約予告期間が6ヶ月前であるにもかかわらず、閉店の1ヶ月前に動き出したのでは、次の借り手が見つかるまでの家賃(空家賃)を払い続けなければならないリスクが生じます。
理想的なのは、閉店を決意した段階ですぐに専門業者へ相談し、解約予告を出す前に次の入居者(買い手)を見つけることです。これにより、無駄な家賃の支払いを防ぎ、スムーズな引き渡しが可能になります。「逆算して動くこと」が、居抜き売却成功のカギと言えるでしょう。
居抜きで飲食店を売るための8つのステップ
それでは、居抜き売却をするためには、どのようなステップが必要か見てみましょう。今回は一般的に多い方法である、居抜き売却の専門業者を利用する場合をご紹介します。
①契約書やリースの確認
まずは賃貸借契約書を確認し、解約予告の期間や原状回復の範囲をチェックします。特に「造作譲渡禁止特約」がないか、保証金の償却(引き率)がどうなっているかは重要です。また、厨房機器のリース契約がある場合、残債の有無や所有権の移動が可能かも確認が必要です。
②専門業者に相談
契約書に「原状回復義務」がある場合でも交渉の余地はありますが、最も重要なのは「貸主に解約通知を出す前」に相談することです。通知を出してしまうと、ルール通り原状回復(解体)を求められるリスクが高まります。専門業者には、この段階までに相談しましょう。
③貸主の承諾
貸主から「造作譲渡の承諾」を得ます。これがなければ売買は成立しません。また、ケースによっては貸主への謝礼として「承諾料(ハンコ代)」などを請求される場合があるため、この段階で条件を確認しておくと資金計画が立てやすくなります。
④現地調査、査定
専門業者が店舗を訪問し、設備の状態や立地を調査して価格を査定します。この際、平面図や内装工事の明細書を用意しておくと査定がスムーズです。また、査定額を少しでも上げるために、厨房の油汚れなどを清掃し、清潔感をアピールすることも有効です。
⑤居抜きの購入希望者を募集
専門業者が買い手を探します。インターネットで広く募集する場合もあれば、従業員や常連客に知られないよう、登録会員のみに公開する「非公開(クローズド)募集」を行う場合もあります。営業への影響を考慮して、募集方法を選びましょう。
⑥売却条件交渉
買い取り希望者に内覧してもらい、具体的な条件を交渉します。価格だけでなく、「いつ引き渡すか」「店内の私物(皿や調理器具)はどこまで残すか」といった詳細も、後々のトラブルを防ぐために明確にします。
⑦造作譲渡契約の締結
貸主の了承を得た後、売り手と買い手で「造作譲渡契約」を結びます。ここでは、売却後に設備が故障しても売り手が責任を負わない「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の免責」条項を入れるのが一般的です。
⑧物件の引き渡し
買い手と貸主が新たな賃貸借契約を結び、同時に売り手の契約を合意解約します。最後に電気・ガス・水道の名義変更(または閉栓・開栓)手続きを行い、鍵を引き渡して完了となります。
【実例公開】飲食店の居抜き売却相場と査定額の決まり方
「自分のお店はいくらで売れるのか?」これは多くのオーナー様が最も気になるところでしょう。居抜き売却の相場は、主に「立地」「厨房設備の充実度」「家賃の適正さ」の3要素で決まりますが、実際の数字を見たほうがイメージしやすいはずです。ここでは具体的な成功事例をご紹介します。
1.スケルトン戻しを回避して大幅プラスになったラーメン店の事例
本来であれば、退去時に内装をすべて解体して「スケルトン(何もない状態)」に戻す必要があり、その工事見積もりが200万円だった店舗がありました。
しかし、居抜きとして売却できたことで、解体費用がゼロになっただけでなく、造作譲渡金として150万円の値がつきました。つまり、支出するはずだった200万円がなくなり、150万円の収入を得たため、実質350万円ものプラス効果が生まれたことになります。
2.エリアによる相場の違い
都内の駅近1階路面店のような人気物件であれば、坪単価で計算されることもあり、非常に高値がつく傾向にあります。一方で、空中階(2階以上)や駅から遠い物件の場合は、設備が新しくても価格が伸び悩むことがあります。
査定額は「内装にお金をかけたから高くなる」とは限りません。買い手にとって「そのまま営業を始めやすいか」「集客が見込める立地か」が評価の基準となります。まずは近隣の似たような店舗がいくらで取引されているか、専門家に査定を依頼してみるのが確実です。
関東圏の相場については以下で調べることが可能です。
売却額がそのまま利益になるわけではない。税金と手数料
無事に買い手が見つかり、例えば200万円で売却が決まったとしても、その全額がそのまま手元に残るわけではありません。最終的な「手残り金額」を把握するために、差し引かれる税金と手数料について理解しておきましょう。
まず考慮すべきは「消費税」です。店舗の内装や設備(造作)を売却して得た代金は、消費税の課税対象となります。買い手から受け取った代金には消費税が含まれているため、後日納税が必要になることを忘れてはいけません。
次に「仲介手数料」です。専門業者に依頼した場合、成功報酬として手数料が発生します。一般的には売却額の一定割合(例:10%など)や、最低手数料(例:30万円など)が設定されています。
そして最後に注意したいのが「譲渡所得」にかかる税金です。個人事業主の場合、店舗の売却益は譲渡所得として扱われ、確定申告が必要です。法人の場合は法人税の計算に含まれます。これらを知らずに使い込んでしまうと、後から税金の支払いに困ることになりますので、計画的に資金を残しておく必要があります。
参考:
国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
居抜きで売却する場合のポイントは?
最後に、居抜きで売却する際のポイントをご紹介しましょう。
■貸主の承諾は絶対に必要
一般的に賃貸借契約には「原状回復」が義務付けられています。この場合、通常だと造作を残した「居抜き」での引き渡しは認められません。しかし、条件によって居抜きを認める貸主も増えています。引き渡しまでトラブルなくやり取りができるよう、専門業者にアドバイスを受けて丁寧に交渉すると良いでしょう。
■買い取り希望者との価格交渉について
一般的に、専門業者が査定した金額=売却価格ということにはなりません。売り主と買い取り希望者、双方とすり合わせることになります。1番のポイントは立地です。立地が良いと希望者が募りやすく、希望者が多ければ多いほど、優位に交渉を進めることができます。造作で重視されるのが、エアコンやダクト、防水などの厨房の環境です。内装の「こだわり」については、買い取り希望者によっては価格に反映されないこともあるようです。
■リース設備について
リース期限が残っている設備は、そのままだと売却することができません。残債を支払うなど、契約書に沿って手続きを進めましょう。
当然、従業員にとって勤め先がなくなり、解雇されてしまうというのはとてもショックが大きいものです。そのため従業員を雇う店の場合は債務整理前後にしっかり、誠意をもって対応する必要があります。
飲食店を高く・早く売却したいなら、プロに無料相談
ここまで解説してきた通り、飲食店の居抜き売却には「貸主との交渉」「適正価格の査定」「法的な契約手続き」など、専門的な知識が不可欠です。
自分だけで進めようとすると、思わぬトラブルで白紙に戻ったり、相場より安く買い叩かれてしまったりするリスクがあります。
あなたの店舗が持つ価値を正しく評価し、少しでも多くの現金を残して次のステップへ進むためには、実績豊富なプロの力を借りるのが一番の近道です。
「私の店はいくらになるの?」と気になった方は、まずは当サイトの無料査定を利用して、手残り金額の目安を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事に関するQ&A
-
諦める必要はありません。契約書に原状回復義務が記載されていても、貸主(大家さん)との交渉次第で居抜き売却を認めてもらえるケースは増えています。ご自身での交渉に不安がある場合は、貸主との交渉もサポートしてくれる居抜き売却の専門業者へ、まず相談してみることをお勧めします。
-
内装のこだわりが価格に反映されにくいケースもあります。買い手が重視するのは、エアコン、ダクト、防水といった厨房設備です。また、売却価格の交渉で最も影響が大きいのは店舗の「立地」です。人気エリアなど立地が良ければ希望者が集まりやすく、交渉を有利に進められる可能性が高まります。
-
「貸主(大家さん)から造作譲渡の承諾を得ること」です。この記事で紹介している8つのステップの中でも、これがなければ売買交渉や契約に進むことは一切できません。個人間で売却する場合でも、専門業者を介する場合でも、必ず必要となる最も重要な手続きです。