飲食店移転を成功させるには? 閉店から開店までの流れとコストの削減方法を紹介

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飲食店を経営する中で、移転を検討することは珍しくありません。しかし、メリットやデメリットに加え、どんな手順で進めていくか、一体いくらかかるのかなど、気になることは多いのではないでしょうか。そこで、移転を進める前に知っておくべきこと、手間とコストを抑える方法を紹介します。
飲食店移転のメリット・デメリット
移転の理由・目的はさまざま。たとえば、より良い立地を選び集客できるようにする、固定費を抑えて経営を改善する、時代に合わせて業態変更をし売上を立てるなどが考えられます。課題解決や経営戦略のために移転を決断する経営者が多いはずです。中には、条件がそろった物件の情報が舞い込み、移転を決断するケースもあるでしょう。
一方でリピーターが離れる可能性や移転・開店に伴う費用などのリスクもあります。店舗の移転には、メリット・デメリットがあることを踏まえ、決断していくことが大切です。
移転をするための大まかなステップ
飲食店を移転する場合、現店舗の閉店を経て、新店舗を開店します。一般的には次の流れで進めます。
■1.移転先を探す
課題解決や経営戦略といった目的を定め、事業計画と資金計画を立てることで、移転先は見つけやすくなります。候補物件を比較する際には、まずは立地・人流データ・周辺競合の3点を重視すると良いでしょう。次に、初期投資の見積もりを取ります。その後、オープン日を定めて、工事や申請の期間を逆算しスケジュール化します。
■2.現店舗を閉店する
移転をするには、現店舗を閉店しなければなりません。通常の「閉店」と同じ工程が必要であるため、賃貸借契約書にもとづき、原状回復工事をしなければなりません。小さな店舗であっても工事と不用品の処分だけで100万円超の負担が発生することは珍しくありません。また、解約予告期間分の賃料、その間の光熱費、リース契約の途中解約違約金などの支払いも必要です。さらに忘れてはいけないのが、スタッフへの説明、常連さんをはじめお客様への移転の案内です。最後まで丁寧に行いましょう。
■3.新店舗の開店準備をする
飲食店開業の流れとほぼ同じです。店舗の内装・外装工事をし、開業まであと1カ月程度になったら、開業に必要な届け出を提出します。費用面では、保証金・礼金・仲介手数料といった物件取得費、工事や設備の費用、宣伝広告費、軌道にのるまでの運転資金などが発生します。

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飲食店の移転コストの負担を減らす方法は?
良い移転先が見つかり、事業計画を念入りに立てたとしても、閉店・開店で発生する費用は大きく、その後の経営状況に影響を及ぼしてしまうこともあります。そこでおすすめなのが、現店舗の居抜き売却です。専門用語では「造作譲渡(ぞうさじょうと)」とも呼ばれます。
居抜き売却とは、店舗の内装や設備を営業していた時そのままの状態で売却する方法。居抜き売却が成立すれば、原状回復工事が不要になり、まとまった売却益が得られる可能性もあります。売却益を移転資金にまわすことで、資金面の負担も不安も大きく減らすことができるでしょう。
居抜き売却を進めるタイミング
契約条項には「解約予告期間」が定められています。これは、解約を申し出てから一定の期間は家賃を支払い続けるという規定であり、店舗物件であれば4〜8カ月間程度です。居抜き売却で譲渡先が決まると、貸主は家賃収入を途切れることなく得られるので、解約予告期間の支払いが短縮したり免除されたりすることがあります。しかし、貸主の考え方次第であるため、計画的に解約の申し出をすることが大切です。
では、どのタイミングで居抜き売却に動き出せばよいのでしょうか。推奨ステップは以下の通りです。
■1.専門業者へ相談する
貸主に申し出をする前に、まずは居抜き売却の専門業者に相談します。居抜き売買市場の現状や相場などを把握するとともに、貸主へ相談するタイミングを話し合いましょう。
■2.貸主への承諾を得る
申し出はせずに「居抜き売却が可能かどうか」を貸主に相談を持ち掛けます。無断で募集をかけるとトラブルの元になるため、事前のすり合わせが重要です。
■3.後継テナント(買取希望者)を探す
貸主の承諾を得た上で、募集と内見を進めます。
この手順を踏まずに、買取希望者が決まってから解約通知を出すことは、絶対に避けなければなりません。もし貸主が居抜き譲渡を承諾しない場合、成約が頓挫する可能性があります。
また、貸主との交渉が長引き買取希望者が辞退してしまう、解約予告期間の支払いで揉めるといったトラブルも考えられます。加えて、居抜き売却と解約予告を同時に行うことも避けましょう。「退去日」というデッドラインが決まってしまうため、退去日までに買取希望者が現れるとは限らず、最終的に原状回復工事を自分ですることになるかもしれません。
売却できない、原状回復工事をするとなれば、コスト負担は大きくなってしまいます。
移転は閉店と開店を同時に行うため、費用も労力も求められます。専門業者の力を借りて、効率的に取り組むことをおすすめします。