居抜き売却とは?いまさら聞けない、飲食店の居抜き売却のメリット・デメリットを解説
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「閉店するなら居抜き売却をした方がいい」と聞いたことはありませんか。ですが、どういった仕組みの売却方法なのか、いまいちわからない方も多いのではないでしょうか。そこで、そもそも居抜き売却とはどんなものなのか、基本的な情報をわかりやすくご説明します。
この記事は、こんな人におすすめです
・飲食店の閉店や移転を検討しているオーナーの方
・原状回復費用などの閉店コストをできるだけ抑えたい方
・店舗の造作(内装や設備)を少しでも高く売却したい方
目次
居抜き売却とは?
内装、厨房器具や空調などの設備、什器などが営業していた状態のままになっている物件が「居抜き物件」。居抜きの状態で次の借主に引き渡すことが「居抜き売却」です。賃貸物件と自己所有物件とでは、居抜き売却に含まれる範囲が異なります。賃貸物件であれば、次の借主に店舗造作一式を譲渡(造作譲渡)して退去。一方、自己で所有している物件の場合は、造作だけでなく建物と土地も売却することを含めて居抜き売却というのが一般的です。
居抜き売却のメリット
居抜き物件の売買マーケットは非常に活発です。売り手にとっても買い手にとっても、メリットがあるためです。
■原状回復費用が不要
ほとんどの場合、賃貸借契約書には原状回復義務が記載されています。そのため借主は撤退時、内装や設備などすべての造作を取り払った状態である「スケルトン物件」にしなければならず、原状回復工事を行います。工事費用は物件の状態や立地によって異なるものの、1坪あたり2~4万円程度が相場で、決して安くありません。一方、居抜き売却ができれば原状回復工事が不要であるため、その分のコストを抑えることができます。
■店舗資産の資金化が期待できる
内装、設備、調理器具など造作の売却が可能。買い手にとって造作に魅力があればあるほど付加価値となり、評価額は高くなります。状態によっては評価額が高値ではないこともありますが、処分費用をかけずに済むだけでもメリットといえるでしょう。造作に含まれるものはさまざま。例えば壁や天井などの内装、エアコン、トイレなどの設備、シンクや冷蔵庫などの厨房設備、厨房機器などです。ただし、椅子やテーブルなどの家具は、対象となるケースとならないケースがあります。
■退去日ギリギリまで営業できる
営業を続けたまま内見や契約を進められますし、設備や厨房器具などの運び出しをせずに済むため、退去日近くまで営業を続けることができます。
■空家賃の支払い期間を短縮できる
貸主や不動産会社へ解約を申し出てから実際に解約するまでの期間を解約予告期間といいます。賃貸借契約書には解約予告期間が定められており、退去をしても期間内は賃料を支払い続けなければなりません。解解約予告期間は、次のテナントが見つかるまで貸主が家賃収入を得られなくなるリスクに備えて定められたものです。そのため居抜き売却ができて新しいテナントが決まれば、解約予告期間の終了を待たずに契約解約の合意が得られ、無駄な家賃の支払いをせずに済みます。
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居抜き売却のデメリットと注意点
一方で、事前に知っておきたいデメリットもあります。
■居抜き売却NGの貸主もいる
賃貸借契約書で造作譲渡が禁止されていることは珍しくありません。居抜き売却をするためには、貸主と交渉し承諾を得なければなりません。
■経営に影響が出ることがある
買い手が見つからないと閉店のタイミングを逃し、赤字経営が続いてしまうことも。買い手がなかなか見つからず、原状回復工事へと切り替えなければならないケースもまれにあります。買い手とのマッチングがうまくいかない場合も想定しておくことが大切です。また、営業をしている間に「居抜き物件」として情報が外に出ます。閉店することが早い段階で従業員やお客さまに知られてしまう可能性があることもデメリットといえるでしょう。
■口コミサイトの影響を受ける
買い手は同じ店舗で営業をすることになるため、口コミサイトなどで現在、どんな評価を得ている店なのかを調べるでしょう。マイナスの情報が多いと、購入を控えてしまうかもしれません。
居抜き売却をする2つの方法
しっかり理解しておきたいのは、造作譲渡契約は物件の賃貸借契約とは別の契約であることです。居抜き売却には「造作譲渡付」と「現状引き渡し」の2つの方法があります。「造作譲渡付」の場合、造作物すべての持ち主である売り手(現オーナー)と買い手で直接、造作譲渡の内容や金額の交渉をします。早期開店を望む買い手に人気がある方法なので、柔軟に交渉すれば、マッチングはスピーディに進むでしょう。ただし、造作を買い取るために買い手は売り手に支払いをするため、ある程度の資金力がある買い手でなければできません。
「現状引き渡し」とは、貸主である物件オーナーと売り手である店舗の経営者との間の契約が終了したあとに店舗を取引する方法です。売り手は貸主と造作譲渡契約をします。その後、賃貸借契約と譲渡契約が同時に進みます。
居抜き売却は、はじめから買い手の目処が立っている場合を除き、個人で進めるのは難しいでしょう。居抜き売買の実績があり、信頼できる業者のサポートを得ることも大切です。売却のスタートとなる、貸主との交渉段階から相談してみることをおすすめします。
次項からは、居抜き売却を行う際の具体的な手続き・流れについて解説していきます。
飲食店を居抜き売却する際の手続き・流れ
居抜き売却を成功させるためには、正しい手順で進めることが欠かせません。ここでは、相談から引き渡しまでの具体的な流れを4つのステップで解説します。
1. 専門業者への相談と造作の査定
まずは、店舗の売却実績が豊富な専門業者へ相談しましょう。店舗の図面や賃貸借契約書、厨房機器のリストなどを用意しておくとスムーズです。業者が実際に店舗を訪問し、内装の痛み具合や厨房設備の動作状況などを確認して、造作の査定額を算出します。この査定額をベースに、希望の売却価格を設定していきます。
2. 貸主(大家さん)への承諾と解約予告
前述の通り、居抜き売却を進めるには貸主の承諾が必須です。専門業者のサポートを受けながら貸主に居抜きでの退去を打診し、了承を得ます。承諾が取れた段階で、正式な「解約予告」を提出するのが一般的です。解約予告期間のカウントダウンが始まると後戻りが難しいため、タイミングは業者とよく相談して決めましょう。
3. 買い手募集と内見の対応
貸主の承諾が下りたら、いよいよ買い手の募集をスタートします。業者のポータルサイトや独自のネットワークを通じて情報が公開されます。興味を持った候補者が現れたら、店舗の内見に応じます。営業中に内見を行うことも多いため、お客様の迷惑にならない時間帯を調整し、店舗を魅力的に見せる工夫が求められます。
4. 造作譲渡契約と賃貸借契約の締結・引き渡し
条件に合う買い手が見つかり、双方が合意すれば「造作譲渡契約」を結びます。それと同時に、買い手と貸主の間で新たな「賃貸借契約」が締結されます。すべての契約が完了した後、約束の期日に鍵や備品を引き渡し、売却代金が振り込まれたことを確認して手続きは完了となります。
居抜き売却で造作を少しでも高く売るコツ

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せっかく居抜きで売却するなら、少しでも高い評価額をつけたいものです。ここでは、査定額をアップさせ、スムーズに買い手を見つけるための3つのコツをご紹介します。
厨房機器や設備の清掃・メンテナンスをしておく
買い手は内見時に、設備がすぐに使える状態かどうかを厳しくチェックします。特に油汚れが溜まりやすい換気扇やフライヤー、水回りのグリストラップなどは、プロの清掃を入れるか、日頃から念入りに掃除をしておくことが重要です。また、冷蔵庫やエアコンなどに不具合がある場合は、事前に修理しておくか、査定時に正直に伝えることで後のトラブルを防げます。
リース品と所有物を明確に分けておく
店舗内にある機器が「自社の所有物」なのか、それとも「リース契約中のもの」なのかを明確にしてリスト化しておきましょう。リース品は勝手に売却・譲渡することができず、原則として残債を一括清算するか、買い手にリース契約を引き継ぐ(再審査が必要)ことになります。ここが曖昧なままだと契約直前で破談になるリスクがあるため、事前の仕分けが必須です。
早めに売却活動をスタートする(解約予告期間に注意)
高く売るための最大のコツは、時間に余裕を持つことです。解約期日が迫っていると「安くてもいいから手放したい」という足元を見られ、買い手からの値下げ交渉に弱くなってしまいます。解約予告期間(一般的には3〜6ヶ月前)を逆算し、閉店を考え始めた段階で早めに専門業者へ相談することが、納得のいく価格で売却するための近道です。
[参照提案] 日本政策金融公庫や商工会議所などが公表している「事業譲渡・M&Aにおけるスケジュール管理の重要性に関する資料」
居抜き売却に関するよくある質問(Q&A)
最後に、飲食店の居抜き売却に関してよく寄せられる疑問にお答えします。
Q1. 赤字続きの店舗でも買い手はつきますか?
はい、立地や設備に魅力があれば買い手はつきます。前の店舗の業績よりも、「自分たちの業態(コンセプト)に合う居抜き物件か」「初期費用を抑えて出店できるか」を重視する買い手が多いためです。
Q2. 従業員に内緒で売却活動を進めることは可能ですか?
可能です。専門業者に「水面下で募集したい」と伝えれば、店舗名を伏せた状態(非公開物件)で買い手を探してくれます。内見も営業時間外や店休日に設定するなど、周囲に気づかれないよう配慮して進めることができます。
Q3. 壊れている厨房機器があってもそのまま引き渡せますか?
現状引き渡しとして契約上合意していれば可能ですが、必ず「故障していること」を事前に買い手へ告知しなければなりません。隠して譲渡すると、引き渡し後にトラブルや損害賠償に発展する恐れがあります。