飲食店の閉店のタイミングはいつ?閉店までのスケジュールとやることリスト
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ようやく決心した飲食店を閉店。でも、「何からはじめればよいのか」とさらに悩みを抱えてしまう…。飲食店を少しでもスムーズに閉店させるためには、閉店のタイミングやスケジュール、閉店までにやるべきことを把握しておくことが必要です。では飲食店を閉店する際の流れとポイントをご紹介します。
物件を手放すには、「賃貸借契約書」の確認からスタート
「賃貸借契約書」の確認からはじめましょう。解約予告期間、原状回復に関する取り決めをしっかりとチェックします。閉店のタイミングやスケジュール感をつかむために欠かせません。例えば解約予告期間が4カ月なら、退去日の4カ月前には契約解消の意思表示をしなければならず、解約を申し出た日から4カ月間は家賃を払わなければならないということです。これを踏まえ、いつまで営業すべきかを考えます。ただし、期間中に次のテナントが決まった場合には、家賃の支払い期間を短くしてもらえる可能性もあります。
原状回復工事をする場合、その期間も考慮し、予定を組みます。大掛かりな工事となれば、その分時間を要します。工事の見積もりは、原状回復の範囲に貸主と借主とで相違がないかの確認後に取りましょう。見積もりを取る際に、貸主や管理会社に立ち会ってもらうのもよい方法です。また敷金の返還のタイミング、敷金返却時の償却額についても賃貸借契約書で確認しておくと金銭面の安心感が増すでしょう。以上の流れで大切なのは、退去までに動くお金や必要な期間を明確にすることです。費用面でも時間的にも無駄を抑えることができます。
居抜き売却をして退去するには?
原状回復工事をする以外に、居抜き売却をして退去する方法もあります。造作、設備、厨房機器などを含めて、新しいテナントに売却できれば、原状回復工事費用を削減できます。
ただし、貸主が許可をしないと居抜き物件として売り出すことはできません。解約の申し入れをする前に、貸主もしくは管理会社に相談をしましょう。居抜き売却は通常、貸主と管理会社で進めるため、その後は指示に従って準備を進めます。一方で、必ず買い手が見つかるとは限らないため、原状回復工事の手順も押さえておくと安心です。
厨房機器の売却や従業員の解約予告、各種手続きを進めよう
営業終了日と解約予告日の目途が立ったら、厨房機器を売却するための査定、リース品の解約・清算を進めます。レンタル品は返還手続きを。リース品やレンタル品と気付かず、売却したり捨てたりするとトラブルや高額請求につながりかねないため、査定を進める前に備品リストをつくることをおすすめします。取引先にも連絡をしましょう。仕入先との契約は、閉店に合わせて解約できるように確実に伝えてください。さらに従業員を雇っている場合は、30日以上前に解雇予告をします。30日未満で解雇する場合は「解雇予告手当」を支払わなければなりません。
続いて、電気、水道、ガス、店舗総合保険の解約も閉店までに済ませます。このとき、閉店まで続く毎月の支払いに加え、営業終了後の後払いになるものを把握しておくことが大切です。水道光熱費、仕入れ、給与、借入などは後払いが発生するはずです。店内の整理をはじめると、食品営業許可証が目に留まるはず。これは閉店後に保健所に返納するため、きちんと保管してください。
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営業停止・廃業後に行う手続き
閉店に関する届け出を各行政機関に提出する必要もあります。保健所、警察署、消防署、税務署……と数が多いものの、提出期限は営業停止後。焦らず順番に進めてください。はじめに済ませたいのが、保健所への届出です。廃業届を営業停止日から10日以内に保健所へ提出することが義務付けられています。書類は、所管の保健所のHPから入手しましょう。あわせて、開業時に取得した「食品営業許可証」を返納します。「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を取得した場合、返還と「廃止届」の提出を管轄の警察署で行います。提出期限は、営業停止から10日以内です。「防火管理者解任届出書」は消防署に提出します。提出期限は設けられていませんが、速やかに提出してください。
税務署で行う手続きも多くあります。個人事業主の場合、営業停止から1カ月以内に廃業届を税務署に提出します。さらに状況に合わせて次のような書類を用意します。従業員に給与を支払っていた場合、廃業から1カ月以内に「給与支払い事務所廃止届出書」、消費税の課税事業者に該当する場合は速やかに「事業廃止届出書」、所得税の青色申告承認を受けていた場合、青色申告をやめた翌年の3月15日までにその旨の届出書をします。その他、雇用保険または労災保険に加入している場合、「労働保険確定保険料申告書」を営業停止から50日以内に労働基準監督署へ提出しましょう。
最後に、これまで来店してくださったお客さまへの閉店のあいさつは、ぜひ丁寧に進めてください。張り紙に加えて、普段使っているHP、SNSなどでも閉店日を知らせ、お客さまに情報が届くようにしましょう。