飲食店が家賃を滞納するとどうなる?「居抜き売却」なら清算して撤退できる可能性も
画像素材:PIXTA
新型コロナの影響が長引き、家賃の支払いの継続が難しくなっている飲食店は決して少なくないでしょう。平時でも、売上の浮き沈み、キャッシュフローの悪化、経営者の急病などによって支払いが厳しくなることは起き得るため、どの店舗であっても家賃の滞納は考えられることです。今回は、飲食店が家賃を滞納してしまった場合の対応の仕方や滞納し続けると起きることなどをご紹介します。
家賃滞納は物件オーナーにとっては一大事
そもそも賃貸借契約では、物件オーナーはテナントに物件を提供し、テナント側は家賃を支払う義務が課されます。しかし飲食店において経営が厳しくなってくると、日々の営業を継続するために、食材や備品の仕入れ、水道光熱費などの支払いを優先しがち。その結果、家賃の支払期限日に満額が払えない、滞納してしまうケースがあります。一方、賃貸物件の経営は入居者からの家賃収入で成り立っているため、家賃滞納は物件オーナーにとっては深刻な問題です。
とはいえ、滞納後すぐに物件オーナーから立ち退きを求められるようなことはありません。「家賃の滞納があっても、当事者間の信頼関係を破壊しない特段の事情がある場合には、契約の解除は認められない」とする、いわゆる「信頼関係破壊の法理」が守られるためです。ただし支払いの遅れが常態化したり、滞納がエスカレートしたりすることがないように、物件オーナーは支払いを促すために必要な対策をすぐに講じます。
滞納してしまったら「お詫び」をする
資金不足であれ、単なる支払い忘れであれ、期限までに支払いができなければ「滞納」とみなされます。物件オーナーもしくは管理会社から連絡が来る前に、まずは電話連絡をしましょう。そして「いつ払うか」を伝えてください。
支払いが厳しい状況である場合は「いつまでにいくら支払うか」を書面にして提出しましょう。このとき、「来月の支払期限日に2カ月分まとめて支払う」といった約束を交わすのはおすすめできません。支払い能力があるなら、滞納1カ月分を分割し、少しずつでも返していくべきです。資金繰りのさらなる悪化を防ぐことにもつながります。
画像素材:PIXTA
滞納は3カ月がリミット
滞納に対し、物件オーナーがとる行動は大きく2つです。1つは入居をさせたまま、家賃の支払いを求めていくこと。もう1つは、賃貸借契約を解除して退去させることです。家賃を滞納すると、物件オーナーは次のような対応を取ることが考えられます。
■電話や内容証明郵便で支払を求められる
滞納後、テナント側が何も連絡をしなければ、物件オーナー側から連絡が入り、支払いを催促されるのが一般的です。連絡を無視したり、約束をしても期日までに支払いをしなかったりすると、内容証明郵便で督促状が届きます。内容証明郵便は裁判などの法的措置の前段階に使われるものなので、物件オーナー側は最悪の場合は訴訟もあり得ると想定して準備を進めていると考えましょう。物件オーナーが弁護士に代理人を依頼するケースもあり、その場合は弁護士から支払いの催促をされます。
■賃貸借契約の解除が検討される
滞納が続き、物件オーナーが「催促をしてきたが、誠意ある対応が見られない」と判断した場合、信頼関係が破綻しているといえるため、強制的な契約解除が検討されます。3カ月以上の滞納になると強制退去になる例が多いようです。
■連帯保証人に支払いを求める
連帯保証人がついている場合、保証人に滞納分の支払いが請求されます。
居抜き売却なら清算できる可能性がある
経営が厳しくなっても、懸命に育ててきた店を手放す決断をするのは難しいことです。しかし、家賃を滞納しはじめたら経営を立て直すのは非常に厳しいといわざるを得ません。日々の経営状況から最低限の収支ラインを設定しておいて、資金力があるうちに撤退をするのは賢い経営判断といえるでしょう。
撤退時は居抜き売却を検討してみましょう。退去時は一般的に、工事費用をかけて店舗から造作や厨房機器などすべて撤去し、スケルトンにしなければなりませんが、居抜き売却ができれば、スケルトン工事を回避できます。さらに、売却で得た資金を清算にあてることができるかもしれません。居抜き売却をする場合、撤退時期の判断とともに業者選びも非常に大事です。居抜きの専門業者に依頼することで時間やコストが削減できますし、市場の動きを鑑み、サポートしてくれるためです。
撤退後に返済義務が残るようなことがあっては生活に影響が出てしまうかもしれませんし、新たな1歩を踏み出すこともできません。やり直すための早期撤退を選択肢のひとつとして持っておくことは非常に大切です。