飲食店物件を居抜きで買取してもらうには? 売却するメリットと基本の手順
画像素材:PIXTA
経営者が店舗を手放すとき、賃貸契約を解約して退去する、知り合いに譲渡するなどいくつかの方法があります。中でも閉店コストを抑えたり、今後の事業展開につなげたりする際に有効な策が、居抜き物件として買い取ってもらうことです。どんなステップを踏めばいいのか、ポイントや注意点とともにご紹介します。
居抜き物件を買取してもらうことのメリット
賃貸物件を手放す場合、一般的には店舗の造作や厨房機器はもちろん、内装もきれいに撤去するスケルトン工事を借主が行い、解約・返還します。工事費以外にも空家賃や保証金の返却など閉店コストがかかります。
一方、店舗の内装、造作、厨房などの設備が残ったままの居抜きで後継テナントを探すことができれば、最低限の閉店コストで済みます。さらに、撤退する直前まで営業を続けられる、造作譲渡料を得ることができるというメリットもあります。
居抜き物件を買い取ってもらう際の手順
居抜き物件を買い取ってもらうまでには、次のステップを踏みます。
1 専門の業者に居抜き買取を相談
居抜き物件の買取には、査定、買取希望者探し、契約とあらゆる専門性が求められます。多くの不動産会社で居抜き物件の売却を行ってはいるものの、居抜き売却に特化したサービスを展開する専門業者などを利用する方が安心でしょう。
2 業者による現地調査と査定
専門業者に査定を申し込むと、店舗の設備状況、内装、立地、商圏などの調査と売却希望条件のヒアリングが行われます。その後、売り出し価格が決まります。厨房や客席の清潔さは査定にプラスになるため、閉店を決めていても、日々の清掃は怠らないようにしましょう。また、買取に関する悩みや疑問はここでじっくり話しましょう。業者との相性もわかるはずです。
3 貸主に居抜き売却の承諾を得る
貸主の承諾を得ずに募集をした場合、買取希望者が見つかっても売却できない、造作譲渡ができないことが起き得ます。必ず事前に承諾を取りましょう。
この時点で退去日を決める必要はありません。退去日を決めると、売却できないまま退去日を迎えてしまう、退去日が近いことを理由に買取希望者が値下げ交渉をしてくることが考えられるためです。また、希望者が見つからなかったり、納得できる条件に至らなかったりした場合、そのまま営業を続けることもできます。解約予告は売却の目途が立ってから出しましょう。
4 買取希望者の募集
業者によって買取希望の募集方法は異なります。例えば、Web媒体の掲載では広範囲で募集することができます。直接営業やマッチングは限定的な方法であるものの、売主の事情や条件により近づけることができるでしょう。内覧会・オンライン内覧会を実施する業者もあります。募集方法に希望がある場合、売却相談の際に確認や質問をしておきましょう。
5 譲渡契約を締結
買取り希望者が見つかり、売却条件の折り合いがついたら、まず造作譲渡契約を締結します。契約書には造作譲渡する品のリスト、造作譲渡料、引き渡し日などが記載されます。売却後にトラブルにならないように、造作・設備の状態としっかり確認し、リストにします。
6 賃貸借契約の締結
造作譲渡契約後に貸主と買取り希望者とで賃貸借契約を締結します。賃貸借条件が合意に至った場合、売主と貸主との賃貸借契約の解約手続きを行います。
7 店舗の引き渡しと決済
すべての契約を終えたら、決められた日時に店舗を引き渡します。鍵と一緒に、取扱説明書などの書類も引渡します。売却代金は一般的には引き渡し後に振り込まれます。
画像素材:PIXTA
居抜き買取の際のポイントは?
経営者にとってメリットのある居抜き売却ですが、注意点もあります。
■買取先が見つかるまでに時間がかかることがある
飲食店のうち、限られた業種しか営業できない店舗の場合、買取り希望者が限られるため、売却がスムーズにいかないこともあります。後継テナントがあらわれるまで営業を続ける、体力があるうちにスケルトン工事に切り替えて退去をするなどの可能性を検討しておきましょう。
■スタッフを最後まで大切に
物件売却の募集を見てスタッフが閉店を知ると、信頼関係が崩れてしまうことがあります。閉店のタイミングが予定と変わってしまったり、退職や退職金のことでトラブルが起きたりする例もあります。
募集が始まる前にスタッフに閉店を伝え、退職や転職の準備ができるようにすると良いでしょう。労働基準法では、飲食店舗を閉店する場合は閉店の30日前までに閉店告知をしなければならないため、必要なステップです。取り引き先も同じです。閉店間近に伝えるのではなく、事前に伝えるようにしましょう。