飲食店物件を居抜きで買取してもらうには? 売却メリットと手順の流れを解説
画像素材:PIXTA
経営者が店舗を手放すとき、賃貸契約を解約して退去する、知り合いに譲渡するなどいくつかの方法があります。中でも閉店コストを抑えたり、今後の事業展開につなげたりする際に有効な策が、居抜き物件として買い取ってもらうことです。どんなステップを踏めばいいのか、ポイントや注意点とともにご紹介します。
目次
居抜き物件を買取してもらうことのメリット
賃貸物件を手放す場合、一般的には店舗の造作や厨房機器はもちろん、内装もきれいに撤去するスケルトン工事を借主が行い、解約・返還します。工事費以外にも空家賃や保証金の返却など閉店コストがかかります。
一方、店舗の内装、造作、厨房などの設備が残ったままの居抜きで後継テナントを探すことができれば、最低限の閉店コストで済みます。さらに、撤退する直前まで営業を続けられる、造作譲渡料を得ることができるというメリットもあります。
居抜き退去とスケルトン退去(原状回復)のコスト・手間の違い
賃貸契約書では、退去時に物件を借りる前の状態に戻す「スケルトン戻し(原状回復)」が原則となっているケースがほとんどです。スケルトン退去の場合、解体工事費として坪あたり数万円以上の費用がかかるだけでなく、工事期間中の空家賃も発生します。
一方で、居抜きで次のテナントに引き継ぐことができれば、こうした多額の退去コストを限りなくゼロに近づけられるだけでなく、造作譲渡料という新たな利益を生み出せる可能性があります。まずはご自身の店舗が居抜きで売却できそうか、専門業者に査定を依頼してみるのが賢明な判断と言えるでしょう。
以下の表は、居抜き退去とスケルトン退去の違いを分かりやすくまとめたものです。
| 項目 | 居抜き退去 | スケルトン退去(原状回復) |
|---|---|---|
| 工事費用 | 基本的に不要(一部修繕費がかかる場合あり) | 坪あたり数万円〜(高額になりやすい) |
| 空家賃 | 引き渡し直前まで営業可能で抑えやすい | 解体工事期間中の家賃が発生する |
| 金銭的メリット | 造作譲渡料として売却益を得られる可能性がある | なし(原状回復費用のみ発生) |
居抜き買取(造作譲渡)の相場と価格が決まるポイント
居抜き物件を買い取ってもらう際、造作譲渡料として受け取れる金額の相場は、店舗の規模や立地、設備の状態によって大きく変動しますが、一般的には数十万円から数百万円程度となるケースが多いです。買取価格を左右する主なポイントは大きく分けて3つあります。
■厨房機器の年式と状態
導入から数年以内の新しい機器は高く評価されやすくなります。
■汎用性の高い内装
特定の業態に特化しすぎた内装よりも、様々な業態で使い回しやすいレイアウトの方が、次の借り手からの需要が高まります。
■立地と賃料のバランス
集客力のある立地でありながら、相場に見合った適正な賃料であることは、買取希望者にとって非常に重要な条件となります。
居抜き物件を買い取ってもらう際の手順
居抜き物件を買い取ってもらうまでには、次のステップを踏みます。
1 専門の業者に居抜き買取を相談
居抜き物件の買取には、査定、買取希望者探し、契約とあらゆる専門性が求められます。多くの不動産会社で居抜き物件の売却を行ってはいるものの、居抜き売却に特化したサービスを展開する専門業者などを利用する方が安心でしょう。
2 業者による現地調査と査定
専門業者に査定を申し込むと、店舗の設備状況、内装、立地、商圏などの調査と売却希望条件のヒアリングが行われます。その後、売り出し価格が決まります。厨房や客席の清潔さは査定にプラスになるため、閉店を決めていても、日々の清掃は怠らないようにしましょう。また、買取に関する悩みや疑問はここでじっくり話しましょう。業者との相性もわかるはずです。
3 貸主に居抜き売却の承諾を得る
貸主の承諾を得ずに募集をした場合、買取希望者が見つかっても売却できない、造作譲渡ができないことが起き得ます。必ず事前に承諾を取りましょう。
この時点で退去日を決める必要はありません。退去日を決めると、売却できないまま退去日を迎えてしまう、退去日が近いことを理由に買取希望者が値下げ交渉をしてくることが考えられるためです。また、希望者が見つからなかったり、納得できる条件に至らなかったりした場合、そのまま営業を続けることもできます。解約予告は売却の目途が立ってから出しましょう。
4 買取希望者の募集
業者によって買取希望の募集方法は異なります。例えば、Web媒体の掲載では広範囲で募集することができます。直接営業やマッチングは限定的な方法であるものの、売主の事情や条件により近づけることができるでしょう。内覧会・オンライン内覧会を実施する業者もあります。募集方法に希望がある場合、売却相談の際に確認や質問をしておきましょう。
画像素材:PIXTA
5 譲渡契約を締結
買取り希望者が見つかり、売却条件の折り合いがついたら、まず造作譲渡契約を締結します。契約書には造作譲渡する品のリスト、造作譲渡料、引き渡し日などが記載されます。売却後にトラブルにならないように、造作・設備の状態としっかり確認し、リストにします。
6 賃貸借契約の締結
造作譲渡契約後に貸主と買取り希望者とで賃貸借契約を締結します。賃貸借条件が合意に至った場合、売主と貸主との賃貸借契約の解約手続きを行います。
7 店舗の引き渡しと決済
すべての契約を終えたら、決められた日時に店舗を引き渡します。鍵と一緒に、取扱説明書などの書類も引き渡します。売却代金は一般的には引き渡し後に振り込まれます。
査定・売却をスムーズに進めるための必要書類
業者への相談や査定をより正確かつスムーズに進めるため、以下の書類をあらかじめ手元に準備しておくと良いでしょう。
<図版作成>
・賃貸借契約書
現在の家賃や保証金、何ヶ月前に解約予告が必要かといった期間、特約事項などを確認するために必要となります。
・店舗の図面やレイアウト図
内装の寸法や設備の位置が把握できます。
・リース契約書
厨房機器などにリース品が含まれている場合は、残債や契約内容を確認するためにも必須です。
・設備のリストや取扱説明書
まとめておくと、譲渡対象となる物品を明確にする際に非常に役立ちます。
画像素材:PIXTA
居抜き物件を少しでも高く買い取ってもらうためのコツ
大切に育ててきた店舗を少しでも良い条件で売却するためには、事前の準備が重要です。
■日々の清掃と設備のメンテナンス
査定時の印象は価格に直結します。特にグリストラップやダクトなどの厨房周り、そしてトイレの清潔感は査定において重要なポイントです。もし故障している機器があれば、事前に修理を済ませておくか、その旨を正確に業者へ伝えるようにしましょう。
■リース品の有無や権利関係の整理
厨房機器にリース品が含まれている場合、そのままでは譲渡することができません。残債を一括で精算して買い取るのか、あるいは次の借主にリース契約を引き継いでもらうのかなど、事前に権利関係を整理しておくことで手続きがスムーズに進みます。
居抜き買取の際のポイントは?
経営者にとってメリットのある居抜き売却ですが、注意点もあります。
■買取先が見つかるまでに時間がかかることがある
飲食店のうち、限られた業種しか営業できない店舗の場合、買取り希望者が限られるため、売却がスムーズにいかないこともあります。後継テナントがあらわれるまで営業を続ける、体力があるうちにスケルトン工事に切り替えて退去をするなどの可能性を検討しておきましょう。
■スタッフを最後まで大切に
物件売却の募集を見てスタッフが閉店を知ると、信頼関係が崩れてしまうことがあります。閉店のタイミングが予定と変わってしまったり、退職や退職金のことでトラブルが起きたりする例もあります。
募集が始まる前にスタッフに閉店を伝え、退職や転職の準備ができるようにすると良いでしょう。労働基準法では、飲食店舗を閉店する場合は閉店の30日前までに閉店告知をしなければならないため、必要なステップです。取り引き先も同じです。閉店間近に伝えるのではなく、事前に伝えるようにしましょう。
飲食店の買取・居抜き売却に関するよくある質問
Q. 居抜き売却の査定には費用がかかりますか?
A. 一般的に、多くの専門業者は無料で査定を行っています。店舗の図面やリース契約書などの必要書類をあらかじめ用意しておくと、より正確な査定額をスムーズに算出してもらえますので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
Q. 赤字で経営が厳しい状態でも居抜きで売却できますか?
A. はい、可能です。現在の収益状況が赤字であっても、立地や設備の状態に魅力があれば、別の業態で出店を希望する方からの需要が見込めます。早めに専門業者へ相談することで、赤字を最小限に抑えた撤退戦略を立てやすくなります。
Q. 貸主(大家さん)に居抜きでの売却を反対された場合はどうすればいいですか?
A. 賃貸借契約上は「原状回復」が原則となっていることが多いため、貸主に難色を示されるケースは少なくありません。しかし、専門業者が間に入って「次の優良な借り手をすぐに見つけられる」といった貸主側のメリットを丁寧に説明することで、承諾を得られる可能性が高まります。自己判断で無理に進めず、まずはプロに相談して交渉のサポートを受けるのが有効です。