飲食店の経営が厳しい。原因と立て直す方法、資金面の解決策を解説
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コロナ禍に大きな影響を受けるも、飲食業界は活気を取り戻しているように見えます。しかし、東京商工リサーチの調査・分析によると、2024年度の飲食店倒産件数は過去最多。とくに小・零細事業者の生き残りは厳しさを増していることが伺えます。こうした中、経営が厳しい状況になるのは特別なことではありません。主な原因と見直しのポイントなどをまとめました。
飲食店の経営不振の原因は?
そもそも飲食店は安定した売上や利益を確保することができないため、経営が難しい業界です。開業から1年で10%、3年で50%~70%が廃業、10年経つと5%しか生き残れないといわれます。近年は、原材料費の高騰、人手不足と人件費負担の増加などが飲食店経営をさらに難しくしているのです。このほかにも、次のことが経営不振を招く原因になり得ると考えられます。
◯資金計画の立て方が甘く、初期投資の費用が膨らんでしまった
◯収支の把握と管理ができておらず、運転資金が不足している
◯コンセプト設計やマーケティングがうまくいっていない
◯周辺環境が変化した
◯慢性的な人手不足に陥っている
資金の状況を把握し経営を立て直す
経営不振の原因を探るには、資金面の現状を知ることが手掛かりになります。収入と支出を詳細に見直し、どこで資金が不足しているのかを明確にしましょう。
■来客数・売上が少ない
まずは明確な経営戦略を立てることが重要です。戦略がなければ無駄な出費が増え、資金繰りが悪化するリスクが高まります。例えば、戦略なしにメニュー開発をすると管理する在庫量が増え、廃棄ロスが発生しやすい状態に。そのため「おいしいメニュー」「食べたいと思われるメニュー」「売れるメニュー」など軸をつくり、考えてみることをおすすめします。このほか、集客方法を見直す場合は、SNSをはじめとした無料で使えるツールに目を向けてみましょう。
■売上はあるが利益が出ていない
固定費の見直しは重要です。家賃交渉や光熱費の節約、シフト調整、廃棄ロスの改善などで支出を減らせれば、短期的な資金繰りの改善につながります。資金を有効に活用できるようにし、経営基盤の強化を行いましょう。
シフト調整時は1人あたりの業務負担が増えたり、長時間労働を強いてしまったりすることがないように注意すべきです。労働環境の悪化は従業員の離職を引き起こしかねません。雇用条件の見直し、労働条件の改善、教育制度や評価制度の導入、DX化などの視点が有効でしょう。
■資金繰りが上手くいっていない
飲食店では、黒字でも資金ショートを起こしていることがあります。とくに店が急成長し、設備投資や人件費をかけているときに起こる課題です。資金繰りを改善する一番の方法は、「入ってくる現金を早く、出て行く現金を遅く」すること。例えば、業者への支払いサイクルを調整することが考えられます。また、飲食店では繁忙期と閑散期で売上が変動するため、閑散期にどうやって必要な経費を支払うのか計画を立てておくことで、資金ショートを起こすリスクが減らせます。
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状況が悪化する前に居抜き売却の検討を
経営判断の遅れは、状況を悪化させることがあります。社会情勢や周辺環境の変化により受ける影響が大きい場合、店を継続するか閉店するかの検討をし、適切な判断をすることは大切です。
そのとき、選択肢に入れておきたいのが「居抜き売却」です。これは、店舗に内装や設備、什器類を残したまま売却する方法で、売却益を得られる可能性があります。また、一般的に物件を返却する際には、まとまった費用をかけてスケルトン工事をしなければなりませんが、居抜き売却ができれば工事が必要なくなります。撤退費用を抑えるとともに借金返済ができたり、今後に活かせる資金が得られたりするため、前向きな撤退方法といえるでしょう。