飲食店の「閉店」と「廃業」は何が違う?言葉の意味と店じまいで必要な手続きを確認
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閉業と廃業の言葉の意味は、同じだと思われがちです。ところが、実は異なる意味を持っていて、店をたたむまでの過程にも異なる点があります。そこで、閉店と廃業、それぞれの言葉の意味と必要な手続きについて解説します。
「閉店」と「廃業」。それぞれの意味は?
■閉店
ある店舗の営業をやめることが「閉店」です。多店舗展開をしていて、そのうちの1店舗の営業を止める場合は「閉店」を使います。1店舗のみを経営していて、その店舗を止める場合、「閉店」を使うことはできますが、次に説明する「廃業」の方が状況に合っているといえるでしょう。
■廃業
企業や個人事業主が、自らすべての事業を止めることを意味します。1店舗のみを経営してい流状態で、その店舗を閉めるということは、すべての事業活動を止めることなるため「廃業」といえます。
なお、「自らすべての事業を止める」ことが廃業であることに対し、「経営不振で廃業に追い込まれた」状況の場合、自らの判断であっても「倒産」という言葉で区別をします。具体的には、債務超過や支払い不能といった金銭面の理由があるケースです。さらに、倒産の中でも債務を弁済できない状態を「破産」といいます。
閉店・廃業に向けた流れを確認
閉店・廃業をするときには物件を手放すことになります。計画的に進めることが非常に大事です。おおまかに次の流れで行うのがスムーズでしょう。初めにやるべきは「賃貸借契約書にある解約予告期間の確認」です。貸主に対して何カ月前までにどんな方法で解約の申し入れをすれば良いかを調べます。居抜きで引き継ぐケース、原状回復工事をするケース、それぞれの方法で進めます。
リース品の残債もある場合、残額の一括払いが必要です。なお、居抜きで売却する場合、次の出展者に承継できる場合もあるので、リース会社に問い合わせてみると良いでしょう。その他、ゴミの収集業者、保険会社、電気・ガス・水道、仕入れ業者などとの契約解除も必要です。
閉店と廃業で異なるのは、従業員への告知方法
閉店と廃業を進める過程で異なるのは、従業員への告知です。多店舗展開をしていて、そのうちの1店舗を閉店する場合、他店舗に異動を命じることができますが、廃業の場合、従業員を解雇しなければなりません。解雇は従業員の生活に大きな影響を与える問題であるため、経営者はしっかりと対応をすべきです。解雇をする場合、解雇通知を出します。これは企業や経営者が一方的に労働契約の解約の意思表示を労働者に伝えること。口頭、書面、メールなど、いかなる方法であっても従業員が受け取れば効力が生じます。
とはいえ最後までお互いに良い関係でいるために、書面で交付すると良いでしょう。注意しておきたいのは、解雇通知書を使えば即日解雇も可能ですが、解雇予告手当を従業員に支払う必要が発生することです。そのため撤退コストを抑えるとともに、従業員に納得してもらうために、解雇予告通知書を使うことをおすすめします。解雇する30日以上前に解雇予告通知書を渡して、解雇についての説明を行いましょう。
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閉店と廃業、各行政機関での手続きは同じ
閉店と廃業とで異なる点はあるものの、各行政機関での手続きは変わりません。税務署や保健所などで開業の手続きをした場所で、閉店・廃業の手続きをおこないます。
「閉店」と「廃業」は、店を閉めるという点で同じ意味に捉えられがちですが、それぞれの違いを正しく理解することで、店じまいがスムーズに進められます。経営に関わる方はぜひ、正しく理解しておきましょう。