2024年飲食業倒産数、過去最多ペースに。閉店・廃業費用を抑えるには?
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東京商工リサーチの発表によれば、2024年1〜10月の飲食業の倒産(負債1,000万円以上)は820件で過去最多を更新しました。飲食店経営の厳しさが増す中、倒産の悩みを抱えながらも閉店コストがネックになっている経営者は少なくないでしょう。そこで閉店・廃業費用を抑える方法をご説明します。
コロナ関連倒産は減少。物価高倒産が増加
コロナ禍が収束し飲食店に客足が戻り、売上が立つようになってきました。しかし、2024年1〜10月の飲食業の倒産(負債1,000万円以上)は、前年同期比12.7%増で過去最多に。現在のペースで推移すると、年間で初めて1,000件超えの可能性もあると予測されています。
飲食業倒産に占める割合を見ると、新型コロナウイルス関連倒産は385件あるものの、倒産に占める割合は前年同期63.5%と大きく減っており、コロナ禍の影響は落ち着いてきたと考えられます。一方で、物価高倒産は前年同期比4.2%増。原材料費の高騰、水道光熱費の上昇、人件費の増大などが、飲食店の収益を圧迫していることが分かります。
閉店・撤退にはまとまった費用が発生!
収益の悪化で閉店を考える飲食店があるものの、当然、閉店する際にも多くの費用が発生します。そのひとつは解約予告期間分の賃料。契約内容に従い、解約通知後から解約までの数カ月間は閉店をしても家賃を払い続ける必要があります。仮に家賃が20万円で期間が4カ月なら80万円がかかるということです。さらに物件をスケルトンに戻すための原状回復工事費用も大きな資金を必要とします。店舗の広さ、店舗の場所(道路を面しているか空中店舗か)、階数、店舗の構造などの違いで費用は変わり、坪あたり3~10万円といわれます。20坪程度の規模であっても100万円前後かかることも。その他、設備など産業廃棄物を処分するための費用、リースの清算、人件費などの負担も必要となります。
収益の悪化や人材不足など理由に閉店・廃業を検討するものの、資金面を懸念し決心できないことは珍しくありません。借入金の返済が続いている場合、閉店後も支払い続ける必要があることも影響するでしょう。しかし決断を先延ばしにして赤字経営が続けば、資金面の厳しさは増してしまいます。体力に多少の余裕があるうちに経営状況を適切に見極め、決断をするのは大事なことです。
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居抜き売却なら閉店・廃業資金の負担を減らせる
「資金面の負担を減らしたい」「廃業後の生活が気にかかる」と考えるのは当然のこと。そこで知っておきたいのが「居抜き売却」です。内装、厨房器具などの設備、什器などが営業していた状態のままになっている物件を次の借主に引き渡すことで、次のようなメリットがあります。
・原状回復工事をせずに済む
・内装、設備、調理器具など造作を売却し、資金を得られる可能性がある
・空家賃の支払い期間を短縮できる
・設備等の運び出しが必要ないため退去日ぎりぎりまで営業できる
一方、買い手には「居抜き物件を取得できれば開業資金を抑えられる」「開業までの時間が短縮できる」といったメリットがあります。売り手と買い手、双方にメリットがあるため、居抜き物件の売買マーケットは非常に活発です。
居抜き売却をするには?貸主の了承が不可欠
では、実際に居抜き売却を進めたい場合、どうすればよいのでしょうか。はじめに賃貸借契約書をチェックします。居抜き売却が可能な物件かどうかを知るため、原状回復義務や貸主への解約予告期間を確認してください。契約書に原状回復義務がある場合、居抜き売却をすることができないため、貸主と交渉し、売却の許可を取ることが欠かせません。最近では了承してくれる貸主が増えていますが、「飲食店以外の借り手を探したい」と考えたりする可能性はゼロではないため、居抜き売却の意思が固まったら貸主への必ず相談しましょう。
売買市場を考慮し売却価格を決め売り出す、貸主や買い手候補と交渉する、書類関係を処理することなどを自分で進めるのは非常に難しいといわざるを得ません。居抜き売却の専門業者を利用し、ストレスなく閉店・廃業を進めることをおすすめします。